私が津金澤先生にはじめてお会いしたのは、山本武利先生が主宰されていた『百貨店の文化史』研究会でした。当時まだ大学院を出たばかりで、この先の研究をどう進めようか迷っていた私に、津金澤先生はとても親切にご助言くださいました。その後何か機会があると、ご自身の書かれた文章などをお送りくださり、またこちらがお送りした論文などについては、毎回丁寧なコメントをお送りいたただきました。1990年代は一連の百貨店研究において、多くの研究者が三越や高島屋の研究に着手する時期でしたが、先生の阪急百貨店と小林一三の研究はとても先駆的でした。
関西では津金澤先生が中心となり、多くの若手研究者が集まって広告などメディア研究が進められていましたが、先生のような求心力のある方がいて研究会が活発に行われていたのは、とても羨ましい状況でした。
その後私は百貨店で子ども用品が多く取り扱われていることに焦点をあて、子ども市場と子ども向けデザインの生成過程を調べるようになりますが、その成果を出版するために動いていた時、世界思想社をご紹介いただいたのも、津金澤先生でした。先生のご尽力でこの本をまとめることができ、私自身の百貨店研究は次のステップに向かうことができたと思っています。
先生はとても愛犬家でした。私自身が愛犬を亡くしてひどいペットロスになっていた頃、同時期に愛犬を亡くされた先生が、同じ様にかなりお気を落とされているということを竹内さんからお聞きしました。竹内さんを介して私のことを知った津金澤先生は、すぐに私に長文のお手紙をお送りくださいました。そこには愛犬の「パグ・タロー」へのあふれる想いの込められた自作の詩が添えられていて、他人事ではなかった私も思わず涙を流したのを今でも覚えています。
最近は年賀状だけのご挨拶になってしまっており、この度の訃報をおききして、大変寂しい思いでいます。同じ時期に、私の大学院の恩師を含め、お世話になった先生方を一度に失う状況にあり、コロナ禍で何もできないのが悔やまれます。こうして少しでも先生との思い出を書かせていただき、先生のご冥福をお祈りできればと思います。
(2022年7月7日)