「忘れ得ぬ先生の立ち姿」

木下浩一:帝京大学文学部

津金澤先生には生前、大変お世話になった。
私の博論の口頭試問にお越しくださった。
それ以前には、何度か放送関連の資料をお送りいただいた。
私の所属するゼミにお越しいただき、研究会などでお会いした。

私が強烈に記憶しているのは、初めてお目にかかった時である。
お姿を見た瞬間といった方が適切か。

ある方が、津金澤先生をご紹介くださることになった。
待ち合わせ場所は、先生のご自宅近くの阪急・園田駅。
改札を出たところで待ち合わせることになった。

当日、改札にいくと、すでに津金澤先生は来ておられた。
恐縮するよりも以前に、その立ち姿に感銘した。
背筋が伸び、不動のまま、改札をまっすぐに見ておられた。
そのすっくとしたお姿は、先生の人柄や矜持を端的に表していたように思う。

先生の初職は毎日放送であった。
放送局出身の研究者として、私は先生の足元にも及ばないが、
少しでも先生に近づけるよう精進したい。
それしか、ご恩に報いる術はないだろう。

心よりご冥福をお祈りいたします。

(2022年6月18日)